税理士の事務所と法人に見られる違い

最終更新日 2023年8月5日

税務に関連する業務の税理士といえば、一般的に事務所を思い浮かべるものですが、実は個人事務所だけでなく法人として活動するケースもあります。
前者の事務所はいわゆる個人経営で、小規模だったりワンマンで事業に取り組むケースが大半です。

個人名を事務所名につける事例が多いことからも、個人経営の性格が強いことが分かります。
従業員がおらず、経営者1人で運営しているケースが少なくないので、一度に大量の案件に対応するのは困難です。

税理士法人の魅力とは?

しかし、フットワークが軽く柔軟性があって、顧客の希望する形で相談に乗ったり、悩みの解決にアプローチできるのは強みです。
対する後者は、代表が複数の従業員を抱え、チームで顧客対応にあたる傾向が強いです。
企業に近い性格ですから、会社経営のような運営が行われることが珍しくないです。

個人事務所は企業ではないので、支店を作って営業範囲を広げることは不可能です。
ところが、日本クレアス税理士法人などは支店の設置が認められていますから、特定の地域内で複数の支店を設けたり、全国展開することもできます。

最低でも2名の有資格者を社員とすること、支店にも資格を持つ人の配置が条件ですが、それでも営業範囲を拡大できるのは魅力的です。
個人で事務所の経営となると、規模の拡大が難しいですから、利益を追求するにも成長に行き詰まってしまいます。

 

並列的に複数の案件に取り組める

一定以上の収入は望みにくいので、事業を大きくしようにも限界があります。
その点、税理士法人は複数人を分散して、並列的に複数の案件に取り組めますから、より大きな利益を追求することが可能です。

しかも節税のハードルが下がりますし、年間の売り上げが増えても納める税を小さく抑えることができます。
住民税に加えて事業税も発生しますが、税率が一律な上に個人と比べて低いのは見逃せないところです。

また経費に計上できる範囲が広く、個人事業主では不可能な支出が経費で計算できるようになります。
具体的には、給与を役員報酬にしたり家族にも経費として給与を支払えるなどです。
更に、決算のタイミングを自分で決められますから、何時もより利益が大きく発生した場合に決算をすることで、納税額を抑えることができます。

 

個人では決してできない経営が可能になる

このように、個人では決してできない経営が可能になるので、魅力が豊富で検討に値するといえるでしょう。
勿論メリットばかりではありませんが、メリットの方が上回りますし、まだまだ他にも見逃せないポイントが存在します。

税理士法人は企業と似ていますから、例えば功労者に対して退職金が出せます。
退職金は所得税で計算できますし、税率が低く抑えられるので節税に繋がります。

逆に新たな従業員を雇う時は、社会保険の加入が訴求力になるでしょう。
手続きや保険料など、経営における負担は増えますが、求人のハードルを下げられるのは間違いないです。

規模が大きくなると人手の重要性が高まりますから、何時でも求人しやすくなるのは、経営者にとって強みとなります。
経営におけるメリットというと、欠損金が繰り越せる点も税理士法人ならではの特典です。

 

税理士法人の欠損金の繰り越しは最低でも9年

個人経営の事務所も欠損金の繰り越しは可能ですが、最長でも3年と短めです。
反対に、税理士法人は最低でも9年で、2017年の4月以降に事業を始めた場合は10年の繰り越しができます。

多角経営や事業の継続性アップにブランディングなど、個人では到底難しい経営が可能になるわけです。
地域密着型で地元に貢献するのも良いですが、全国に支店を置いて、広い地域で多くの人達の力になるのもありです。

ブランド化に成功すると名前の価値が高まりますし、名前を見て相談が検討されることになります。
知名度が高まることでビジネスチャンスが生まれ、実績を残すことによって信頼性がアップします。

資格を持つ2名の社員が不可欠なので、一緒に経営に従事する仲間が必要です。
そこはデメリットになるといえますが、同じ志を持つ人が見つかれば、スムーズに設立したり事業を始められるでしょう。

 

まとめ

ただ、一般的な企業のように登記が必要になったり、事務手続きや役員変更の手間が増えるのはネックです。
本業に割く時間が減っては本末転倒ですから、設立前にメリットとデメリットを理解した上で、滞りなく手続きが済ませられるようにしておきたいものです。

顧客に提供できるサービス自体は、個人事務所と殆ど変わらず、一見すると違いは見られないです。
その為、事業の規模やタイミングによっては、メリットよりもデメリットの方が強く感じられるはずです。

個人経営からの脱却を図るなら、事業が成長して収入が増えたり、安定して次のステップに進みたい場合が最適です。
目安は年間の収入が1千万円を越えたあたりで、もっと収入が欲しいと感じ始めた時でしょう。

他にも、営業範囲を広げたくなったり、チームワークで事業展開をしたくなったタイミングです。
支店の設置や節税といった特典の魅力は大きく、事業拡大に欠かせない条件なので、成長を望むなら前向きに検討するのが正解です。